アンソニー・フィリップス(ANTHONY PHILIPS)というとソロアルバムだけでも30枚近くになるんではないかと思われ、全部を聴いているわけでもないのですが(とくに最近のものはほとんど聴いていない)、まあ代表作をあげろといわれると、1stソロアルバム「ザ・ギース・アンド・ザ・ゴースト」かなと思います。
アンソニー・フィリップスはジェネシスのオリジナルギタリストで、1970年に発表された2ndアルバム「トレスパス(Trespass)」レコーディング後に脱退しています。ジェネシスは1stは鼻くそみたいなしょうもないアルバムなので、実質わずか1枚のアルバムに参加したのみということでしょうか。後任のギタリストのスティーヴ・ハケットがあいた穴を塞いで余りある個性的なギタリストだったこともあり、アンソニー・フィリップスのジェネシスへの貢献はあまり目立たないですが、「ナイフ」などの名曲を含む「トレスパス」もそれなりに好きなアルバムです。
バンド脱退後音楽学校に通っていたりしたらしいですが、1stソロアルバムを出すのはなんと7年後の1977年。あまりに長い沈黙です。1977年といえばプログレは衰退期に入っており、ジェネシスもスティーヴ・ハケットが脱退して路線変更を図ろうとしていた時期。そんないわば間の悪いタイミングでリリースされたデビュー作は当時はどのように受け入れられたのでしょうか。
さて、この「ザ・ギース・アンド・ザ・ゴースト」ですが、まず目を奪われるのはジャケットデザインの美しさでしょう。まさに私の思うプログレをそのまま表現したようなイラスト。そして内容も、トラッドをベースにした田園風景を想像させる牧歌的な楽曲、決してうまいとは言えないけれど優しさを感じるボーカル。どこかで聴いたことのあるような懐かしい気がするけれどどこにもない音楽、ということで思い入れの深い一枚です。
最近の作品はよくも悪くも洗練されてきたせいか、単なるBGMっぽくなってきたような気もしますが、「プラヴェート・パーツ・アンド・ピーセズ(Private Parts and Pices)」シリーズも初期のころは1stと同傾向の佳品です。