たまたま安価な中古盤を見つけて購入した山本道則の唯一のアルバム「微笑」にどっぷりはまってしまいました。
1975年リリースのオリジナルはマニアの間では知られた作品らしく高値で取引されていたもようです。2003年にハガクレ・レコードにて初CD化された際に一瞬気にはなったものの「アシッドフォークの隠れた名作」というような紹介のされかただったせいで、スルーしてしまったんだと思いますが、これはプログレの名盤と呼ぶにふさわしいすばらしい作品です。ピンクフロイドや四人囃子にも通じるアシッドな感覚は確かにあり、かつフォーキーな歌モノってことで「アシッドフォーク」というジャンル分けも成り立つでしょうが、これはズバリ「プログレ」って表記してほしかったですね。いまさらながらプログレガイド本のバイブル「ユーロ・ロック集成」を見ると、全部で60枚紹介されている日本の名作の一枚としてしっかり紹介されていました。
私がはまった最大の理由は、曲やアレンジが良いからこそ生きるのでしょうが、キーボードの音色だと思います。すべての編曲のクレジットが水谷公生・渋井博となっており、キーボード奏者の渋井博のアイデアが生かされているのでしょうか?ちょっと詳しくわからないですがアナログキーボードがいろいろ使われていて相当いい感じです。サンプリングで本物とほぼ同じ音はシンセで出せるとしても、ちょっとこういう感じは今は出てこないのではないかしら。全体的には、ちょっと弱い感じだけど味わい深いボーカルと、キーボードを多用したおだやかなシンフォニックサウンドで、アルゼンチンやイタリアの歌ものプログレに近い印象も受けます。日本のプログレ史に残る奇跡的な名盤だと思います。