何度目かの再発で「幻の名盤」というほどには珍しくもなくなりましたが、幻ではなくても名盤であることに変わりはないケストレルの唯一のアルバムが久しぶりに再発売されました。リマスター・紙ジャケだけなら以前の再発と大差ないですが、今回はなんと、未発表曲2曲を含む6曲入りボーナスディスク付の2枚組です!
ケストレルといえば短い活動期間に残した唯一のアルバムが、メロディ良し、歌良し、メロトロンたっぷりのアレンジ良しと非の打ちどころのなく、収録曲8曲が全曲名曲、プログレと言う狭い範疇にとどまることのない奇跡的名盤だと思います。
ボーナスディスクの収録曲をいくつか紹介します。
まずは「August Carol (Different Version)」。オリジナルではボーカルパートが終わって曲の後半はメロトロンたっぷりのシンフォニックな展開となり、ラストは情熱的なギターソロが加わってフェードアウトするのですが、Different Versionでは、ラストにもう一波乱あるアレンジで、ギターソロのあとジャジーなオルガンが割って入り、フェードアウトしないで終わっています。めまぐるしい展開という意味で、よりプログレらしいと言えなくもありませんが、オリジナルを聴きなれた耳にはとってつけたようでもあり、オリジナルに軍配でしょうか。
「August Carol (Single Edit)」は、なんと後半のインストのみバージョン。Single Editというからにはシングルがあるんでしょうかね? しかしオリジナルはポップな歌入りなのに、歌部分を外したSingle Editて何なんでしょう。ちなみに、ラストはオリジナルと同様、ギターソロでフェードアウトする版です。
今回の目玉となる初庫出しとなる未発表曲2曲。「Part Of The Machine」は、ソフトロックみたいなメロディとコーラスの美しい曲でありながら、ジャズっぽいオルガンが間奏部分に入っていてケストレルらしいプログレポップになっています。「The Sercher」の方は、さらにポップさが前面に出た曲。ちょっとひねくれたアレンジやずっと鳴り響くオルガンと歪んだギターカッティング、プログレっぽいインスト部分などこちらもケストレル節炸裂です。どちらもアウトテイク、つまりはボツ曲なわけですが、アルバム収録曲とも甲乙つけがたい出来です。どちらもちょっとソフトなんで、この2曲を収録して別の2曲が落ちていたら、アルバムの評価が変わったかもしれません。
このボーナスディスクのためだけにでも、これまでのCDは全部持っててもやはり一家に一セットとなるのが今回のCDでしょうか。スタジオ盤としては決定版でしょう。ライブをやったのかどうか知りませんが、やってたのなら、あとはライブ盤の発掘に期待です。
◇ケストレル(KESTREL)
<メンバー>
デイヴ・ブラック(Dave Black)Gt,Vo
ジョン・クック(John Cook)Kb
トム・ノウルス(Tom Knowles)Vo
フェンウィック・モイア(Fenwick Moir)Bs
デイヴ・ウィッテカー(Dave Whitaker)Dr
<バイオグラフィ>
1971年結成。1975年にCubeより唯一作を発表。ほとんどの曲の作曲を手掛ける中心メンバーのデイヴ・ブラックがスパイダーズ・フロム・マーズ(The Spiders From Mars)加入のため解散。アルバムは1994年に日本で初CD化されて以降も「知る人ぞ知る」作品であり続け、オリジナル盤はもちろんのこと、CDもネットオークションなどで高値取引されていた。国内盤CDとしての再発売は今回が3回目。1994年テイチク(22DN-62)、2001年ビクター(VICP-61402、紙ジャケ・20bitK2スーパーコーディング)、2013年ベルアンティーク(BELLE139026、紙ジャケ・リマスター・SHM-CD、ボーナスディスク付)。
デイヴ・ブラックはスパイダーズ・フロム・マーズでもメインコンポーザーとしてアルバム1枚を残す。ケストレルには及ばないものの、デイヴ・ブラックの個性も光る佳作。デイヴ・ブラックはその後スパイダーズ・フロム・マーズのボーカル、ピート・マクドナルドとゴールディ(*)を結成し1980年まで活動し、「Making up again」のスマッシュヒットを放つ。
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