
先日、関内にオープンしたプログレ居酒屋「ラウンドアバウト」に行ってきまして、プログレファン、ロックファンの方々と酒飲みながらいろんな話をしてましたところ、1970年代にモデルとして活躍する傍らなかなか渋いアルバム2枚を残したエルザの話題が出ました。飲み屋での会話としては「ワールド・ロック・フェスティバル・イーストランドに客としてきていたエルザを見た」とか「雑誌のグラビアを切り抜いて下敷きに挿んでいた」といった感じで全くプログレ文脈ではなかったのですが、無理やりプログレ文脈で紹介してみたいと思います。
エルザは本名がエリザベス・ゲドリックというモデル。ポーランド系アメリカ人の父親と日本人の母親を持つハーフです。1957年6月25日生。1972年からグラビアやCMなどで活躍し、1973年にシングルデビューして歌手としても3枚のシングルと2枚のアルバムを残しています。
1975年にリリースした1st「half & half」が「和製ソフト・ロック仕上がりの本作はフィーメール・ヴォーカルの金字塔!!」(芽瑠璃堂)として紹介されるなど、一般的には1stの方が高い評価を受けており、その評価に違和感はないですが、1977年3月リリースの2nd「ポップコーンと魔法使い」も捨てたものではありません。
この2ndでは四人囃子の茂木由多加(この時期は一時的に四人囃子を脱退していた頃かも)と佐久間正英が作編曲や演奏面で全面的にバックアップ。ずばりプログレやプログレ期の四人囃子を期待すると外しますが、間奏のキーボードのアレンジなどでそれらしいところがなくはないです(70年代のポピュラーミュージックでは珍しくないですが)。いずれにせよモデルの余技などでは決してない聴くほどに味わい深くなる女性ボーカルものの佳品です。個人的には、数種のキーボードが感傷的な雰囲気を静かに盛り上げる「石の花」(エルザの自作曲)と荒井由実の「翳りゆく部屋」にも似たしっとりしたラストのバラード「石の花」が好きです。
エルザは1957年6月生まれなので、2ndリリース時は若干19歳。それにしては自作曲の歌詞も歌唱も大人びているようにも思えます。四人囃子がサポートすることになった経緯は知りませんが、エルザ自身の事務所であったゲドリック商会には三上寛やシネマ(松尾清憲らの)が所属していたこともあり、エルザと三上寛(!)が一緒にツアーを回ったり、エルザのバックをシネマが務めたこともあるようなので、単にスタジオミュージシャンがアイドルのレコーディングに参加しただけというのではなく、もう少し音楽的な縁があったのかもしれません。
少なくとも現時点では本作がエルザの最終作。芸能活動もその後まもなくして停止したようです。ネットを探すと故郷の飲食店を継いだとか食器デザイナーとして活躍しているといった情報もありますがどうしているのでしょうかね。
◇「ポップコーンと魔法使い」参加メンバー
ELZA エルザ(Vo)
YUTAKA MOGI 茂木由多加(Kb) ※メロトロンのクレジットもあり
MASAHIDE SAKUMA 佐久間正英(B、G)
HAJIME HIRANO 平野肇(Dr)
SHIGERU SUGIMOTO(Dr)
TOSHIAKI USUI(G)
KATSUMI KOBAYASHI(G)
◇エルザ関連情報
エルザ / Half & Half (1975)|Cottonwoodhill 別別館(2007/5/23)
エルザ Elza ~神秘的な妖精・モデル~|団塊世代の想い出・別館
エルザ|CINEMA シネマメンバー&スタッフ ブログ
※下記の映像は1975年リリースのシングル「父よ」のB面でアルバム未収録の「エルザのテーマ」(CDでは1st「half & half」にボーナストラックとして収録)。