私が好きな画家のひとり遠藤彰子が上野の森美術館で個展を開催しています。都内では2004年の府中美術館での開催以来10年ぶりとなる個展。私自身は2006年に茨城県つくば美術館で見て以来。
初公開となる四季を描いた1000号(約3メートル×約5メートル)の超大作をはじめとした近作はもちろんのこと、「楽園」「街」シリーズを含む初期からの代表作など70点あまりの絵画と、立体作品やイラストなど遠藤彰子の活動全体が俯瞰できる展示となっています。
私が遠藤彰子を知ったのは画壇の芥川賞と呼ばれた安井賞を1986年に受賞したのがきっかけで、受賞作「遠い日」を含む街シリーズに当時心を奪われ、以来機会があるごとに個展に足を運んでいます。
三角屋根の工場群や煙を吐く煙突、夕日のせいか煉瓦の地の色なのか判然としない赤茶けた迷宮のような街並みが魚眼レンズのような湾曲した構図の中に描かれている「遠い日」。高度経済成長の果てにありえたかもしれないのディストピアのようにも見えますが、日々を平穏に暮らす人々の息遣いや子供らの声が聴こえてきそうで、ノスタルジアさえ呼び起こすのが、この街シリーズに対する私なりの感想です(正しい解釈は知りません)。
遠藤彰子の絵は大型作品が多いので、画集で見るのと本物を見るのとではぜんぜん印象が違います。実は巨大な本物は隅々まで見るってことが物理的にできないこともあって、こんなものが描かれてたのかみたいな細かなことはあとで画集見て気づくってこともありますが、近作でモチーフになっている蛸や蜘蛛、鰐などの巨大生物の生命力みたいなものは壁画みたいな大作を間近で見るからこそでもあります。
会期が2014/1/15~1/28とえらく短いのが残念ですが、制作意欲はまだまだ旺盛のようなので、新作がたまったころにまた個展開催を期待したいです。
魂の深淵をひらく遠藤彰子展|上野の森美術館(2014/1/15~1/28)
「遠藤彰子展」上野の森美術館 すさまじい迫力の前で|MSN産経ニュース(2014/1/23)