
シュルレアリスムを代表する画家の一人、ジョルジュ・デ・キリコの作品約100点を集めた回顧展をパナソニック汐留ミュージアムで観て来ました。東京では2005年秋に大丸ミュージアムで開催された「巨匠 デ・キリコ展」以来9年ぶりの回顧展となります。
サブタイトル「変遷と回帰」が示すとおり、キリコは作風を様々に変えながら作品を発表し続けた画家。約80点の日本初公開作品を含む今回の展示では、作風を古典主義、ネオバロックと変えやがて新形而上絵画に至る1920年代以降の数十年のキリコの歴史を俯瞰できます。
もっとも、なじみのあるシュルレアリスムの作品の多くは活動最初期にあたる1910年代に描かれたもので、今回その時期の作品は4点のみでしたから、好きな絵を鑑賞する楽しさという観点からは少々物足りない内容ではありましたが、特に晩年に手がけた初期作品のリメイクを多数見られたこともあり、改めてキリコの作品全体を振り返る勉強にはなりました(もしかすると今までリメイクの方をオリジナルと思って見ていたこともあったかも)。
今回は展示されていなかったけれど、キリコで一番好きな作品は1914年の「Mystery and Melancholy of a Street(街の神秘と憂愁)」であります。無生物だけの時間の止まったかのような世界を描くことの多いキリコの初期作品の中で、珍しく動きのある人物が描かれ、かつ次の場面を妄想するといろいろ不安な気分が醸し出される、幻想的な作品です。
ジョルジョ・デ・キリコ 変遷と回帰
期間:2014年10月25日(土)~12月26日(金)