石井聰亙の最新作(といっても2005年発表)が、監督のみならず自ら脚本、編集を手がけた「鏡心」。
生き方に思い悩む女優が臨死体験によって新たな自分に気づくというストーリーそのものはなんということはないですが、心の中にするりと入り込むような、「感じる」映画であることは間違いありません。
作品のプライベートさにおいてある意味初期の8mm作品にも通じるところがありますが、どうしようもない衝動を映像作品として結実させたような「高校大パニック」や「88万分の1の孤独」と、観客としっかり対面し緻密な計算によって見る者を幻惑する「鏡心」を見比べると、映画の表現手法の多様性を感じずにはいられません。
もっとも多少見る環境を選ぶ作品であるといえ、我が家の貧弱なAV設備では魅力を最大限感じられなかったようです。映画館である必要はないですが、大画面+サラウンドのハードと、何者にも邪魔されず作品に浸れる時間と空間、これらが揃わないとこの作品を感じることはできません。作品のテーマは興味深いものですし、いずれまた見直してみようと思います。